(一)陽炎 つかまえた
透き通った炎のように、地面からゆらゆらとたち上る陽炎(かげろう)。
とりとめもないものの、あるかなきかのもののたとえとして、使われてきました。また、トンボの古名(こみょう)、蜉蝣(かげろう)、と混同されて、儚い(はかない)ものの代名詞(だいめいし)のようにもなっています。
もとは、「かぎろい」だったそうです。いまは、区別されて、「かぎろい」の方は、明け方(あけかた)の空のほのかな光をさす時に使われます。
「陽炎、稲妻、水の月」
目には見えていても、とらえることができないもののたとえです。
手でとらえれないのだから、とらえようとするのです。目に見えないものなら、どこでとらえましょう。
ゆらゆら 副 摇曳 摇摇晃晃
とりとめのない 惯用 没影的
たとえ 名 比喻
トンボ 名 蜻蜓
儚い(はかない) 形 虚幻的
かぎろい 名 晨光
ほのか 形动 微弱的
稲妻(いなずま) 名 闪电
(二)和草(にこぐさ) にっこり微笑んで
生えたばかりの柔らかい草や、葉や、茎の柔らかい部分を「和草」といいます。
「和し」は、柔らかいとか、細かいという意味。「柔(じゅう)」という字を当てたりもします。
「葦垣(よしがき)の中の和草にこやかに我と笑まして人に知らぬな」
「和草のように、にこやかに私に微笑みかけたりして、二人の仲が、ほかの人にばれないようにね」という意味です。
「にこにこ」「にっこり」などの擬態語も、ここから来ているようです。
英語の三倍はあるという日本語の擬音語と擬態語は、外国泣かせたとか。
でも、私たちには微妙なニュアンスの違いが分かりますね。日本人として受け継いできた、言葉の感覚の奥深さ(おくぶかさ)を感じます。
和草(にこぐさ) 名 刚吐新绿的柔软的小草
葦垣(よしがき) 名 篱笆墙
にこやか 形动 笑嘻嘻 和蔼可亲
ばれる 自一 暴露 败露
にっこり 副 嫣然一笑
ニュアンス 名 微妙差别
卯の花曇(うのはなぐもり)
四月のことを卯月というのは、卯の花の咲く季節だからという説が一般的です。卯の花は空木のこと。幹(みき)の中が空洞(くうどう)なので、こう呼ばれつようになりました。
こぼれつように咲く白い花は、よく、雪やつき、雲、波などにたとえられます。卯月の雪、雪見草(ゆきみぐさ)、夏雪草(なつゆきぐさ)、潮見草(しおみぐさ)、水晶花(すいしょうか)など、さまざまな異称(いしょう)でも呼ばれてきました。
「卯の花腐し」といえば、この時期、卯の花を腐らせるように降る長雨(ながあめ)のことです。
そして、この時期の曇りがちな空が「卯の花曇り」です。晴れの日もよし、雨の日もよし、曇りの日もまたよし。
卯の花の背景には、どんな空模様も似合います。
卯の花(うのはな) 名 卯花 水晶花
空木(いつぎ) 名 溲疏花 水晶花
幹(みき) 名 枝干
こぼれる 自一 凋谢
空模様(そらもよう) 名 天气状况
(三)満天星(どうだんつつし) 空から降ってきた花
夜空いっぱいの星を満天の星といいますが、植物の満天星(どうだんつつじ)、つつじのいっしゅのことです。
なぜ「どうだん」と呼ばれるかというと、枝ぶりが、昔、家庭で使っていた「灯台 (どうだい)」と呼ばれる灯明台に似ているところから。
「とうだい」から「どうだん」に変化したということです。
また、中国語でつつじをさすdu juanの音が「トウダン」に似ているからという説あります。
中国の太上老君(だいじょうろうくん)が誤って天から霊水(れいすい)をこぼし、この木にかかって、壷上(つぼじょう)に固まり、満天の星のように輝いたという伝説の木です。
鈴蘭のような白い花がいっぱい咲いていて、まさに空から降ってきた小さな星。
太陽の光にさえ、キラキラ輝いて、本当に天からの贈り物のようです
満天星(どうだんつつじ) 名 满天星花
つつじ 名 杜鹃花
枝ぶり(えだぶり) 名 树枝形状
誤る(あやまる) 他五 失误 弄错
こぼす 他五 洒,撒
|
|